MT5でEAのバックテストを終えたあと、スプレッドを広げる設定が見つからず、実際の口座でも利益が残るのか確認したくなることがあります。
MT5のストラテジーテスター(=MT5のバックテスト機能)は、履歴データのスプレッドを使います。広がった場合の影響は、元の取引へ追加コストを足す計算で確かめられます。
この記事で分かることは次のとおりです。
- MT5のバックテストで使われるスプレッド
- 取引ごとの追加コストを求める式
- スプレッドが広がったときに残る純利益
- 利益が0になる上乗せポイント(=価格が動く最小の刻み)数
ZEN AI LABでは、無料ゴールドEAの556取引で計算し、スプレッドを2倍にしても純利益の93.94%が残ることを確認しました。読み終えたら、自分のレポートを使って同じ計算ができます。
開示
- この記事に広告・紹介(アフィリエイト)リンクはありません。
- 実例で使ったXMTradingとは、紹介(IB・アフィリエイト)契約を結んでいません。
- 実例のEAは、MQL5で無料配布されているものを通常どおりダウンロードして使いました。
- 実例の数字は過去データのバックテスト結果に計算を加えたもので、将来の成績を示すものではありません。
- 投資助言ではありません。特定のEA・口座の利用を勧めるものではありません。
MT5のテスターは、履歴に記録されたスプレッドをそのまま使う
MT5の公式ヘルプには、スプレッドの扱いが次のように書かれています。
「「テストでは、スプレッドはモデルされる代わりに履歴データからとられます。」(MT5公式ヘルプ「テストの特徴」、2026-09-24確認)」
ここでいう「モデルされる」は、テスターが値を作り出すという意味です。通常のバックテストでは、テスターが任意の値を作るのではなく、履歴に記録されたスプレッドを参照します。
同じ公式ヘルプによると、履歴のスプレッドが0以下のときは、直近で分かっているスプレッドが使われます。また、テスターではスプレッドが常に変動するものとして扱われます。
実ティック(=ブローカーが記録した実際の値動き)を使う場合は、1分足の途中でもスプレッドが変わることがあります。
「「実際のティックを用いたテストでは、1分足の中でスプレッドが変動する場合があります。」(MT5公式ヘルプ「ティックの生成」、2026-09-24確認)」
1分足から作った値動きを使う場合は、その1分足に記録されたスプレッドが固定して使われます。レポートの条件を控えるときは、Every tick based on real ticksなど、使った値動きの種類も一緒に残します。
公式ヘルプが挙げる設定には、銘柄、期間、値動きの生成方法などがあります。その中に、スプレッドの数値を直接指定する項目の説明はありません。
MQL5公式フォーラムでは、MT4のテスターにはSpread欄があり、初期値のCurrentを固定値へ置き換えられると説明されています。同じ回答では、MT5に同じ標準設定はないとされています。これは公式フォーラム上の二次情報です。
テスターの中で広げる公式の道筋はカスタム銘柄だが、ZEN AI LABは試していない
MT5公式ヘルプ「カスタム金融商品」によると、カスタム銘柄(=自分で作るテスト用の銘柄)は「カスタムシンボルの作成」から作れます。「コピー元」を使えば、既存銘柄の設定を写せます。
1分足データの形式にはスプレッドの列があります。データを書き出して編集し、取り込み直す機能も説明されています。作成したカスタム銘柄はストラテジーテスターで使えます。
公式ヘルプからは、この機能を使う道筋が考えられます。ただし、編集したスプレッド列が意図した形でテストへ反映されるかは、ZEN AI LABでは試していません。ここでは具体的な操作手順を示しません。
テストを回し直さずに、取引ごとのコストを足して確かめる
ZEN AI LABでは、テスターを回し直さず、実際に出た取引へ追加のスプレッド分を足します。その合計を元の純利益から引き、コストが増えたときに残る金額を求めます。
中身が公開されていないEAでは、テスター内の条件を変えると、売買のタイミングや約定も変わる可能性があります。取引の組み合わせまで変わると、元の取引にコストだけを加えた結果とは比べにくくなります。そこで、こちらの検証では取引履歴を固定して計算しています。
入力する単位はポイントです。MQL5の公式ドキュメントでは、スプレッドはポイント単位で表され、ポイントの大きさは価格の通貨で表されます。ポイントの大きさは銘柄の仕様にある桁数から確認でき、ZEN AI LABのGOLDの例では0.01です。
契約サイズ(=1ロットで取引する量)も銘柄の仕様から控えます。スプレッドは1ポジション(エントリーから決済まで)につき1回かかるものとして数えます。
式の途中にある「ポイント数 × ポイントの大きさ × 契約サイズ × ロット」は、価格の通貨で表した金額です。GOLDなら米ドルになるため、最後に換算レートを掛けて円にします。
計算は次の順番で進めます。
- テストのレポートから、取引数、純利益、ロットを控えます。
- 銘柄の仕様からポイントの大きさと契約サイズを控え、円への換算レートと、ふだんのスプレッドも控えます。
- 1ポイント上乗せしたときの、1取引あたりのコストを出します。
- スプレッドを2倍にする場合は、ふだんのスプレッドと同じポイント数を掛け、さらに取引数を掛けて合計の追加コストを出します。
- 元の純利益から合計の追加コストを引き、残る割合を出します。
- 利益が0になる上乗せポイント数を式で出し、ふだんのスプレッドと比べます。
基本の式は次のとおりです。
1取引あたりの追加コスト(円)=上乗せするポイント数 × ポイントの大きさ × 契約サイズ × ロット × 円への換算レート
ZEN AI LABの例では、53 × 0.01 × 100 × 0.01 = 0.53米ドルとなり、153.5円を掛けると約81円です。先に上乗せを1ポイントとして計算すれば、1取引あたりの単価は1.535円になります。

固定ロットのEAなら、全取引に同じ単価を使えます。資金に応じてロットが変わるEAは、取引ごとにロットが違います。各取引のロットでコストを計算し、最後に合計する必要があります。
ZEN AI LABの検証手順では、基準、スプレッド1.5倍、スプレッド2倍を確かめます。可能な場合は、スリッページ(=注文した価格と約定した価格のずれ)、手数料、スワップも含めます。
実例:無料ゴールドEAは、スプレッド2倍でも純利益の93.94%が残った
この実例は、テスターを回し直した結果ではありません。過去データのバックテストで出た556取引へ、取引ごとの追加コストを足した計算です。
使った条件は次のとおりです。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| テスター | XMTradingのMT5ストラテジーテスター |
| 銘柄 | GOLD |
| 時間足 | M15 |
| 値動き | 実ティック(Every tick based on real ticks) |
| ロット | 0.01の固定 |
| 初期資金 | 30万円 |
| 期間 | 2025年7月3日〜2026年9月11日(約14.3か月) |
| 取引数 | 556ポジション |
| 純利益 | 746,992円 |
ポイントの大きさは0.01、契約サイズは100、ロットは0.01、円への換算レートは153.5円です。換算レートは2026年9月13日の1時点の値です。
基準のスプレッドは、2026年9月13日に実際の口座で1回確認した53ポイントです。ここでのスプレッド2倍は、取引ごとに53ポイント分のコストを追加する計算です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 取引数 | 556 |
| 純利益 | 746,992円 |
| 1ポイントあたり1取引のコスト | 1.535円 |
| 上乗せ | 53ポイント(2倍) |
| 1取引あたりの追加コスト | 約81円 |
| 合計の追加コスト | 45,233円 |
| 上乗せ後の純利益 | 701,759円 |
| 残る割合 | 93.94% |
53ポイントの上乗せは、1取引あたり約81円です。556取引の合計では45,233円になります。
元の純利益746,992円から45,233円を引くと、上乗せ後の純利益は701,759円です。元の純利益の93.94%が残りました。
今回の結果になった理由は、ロットが0.01の固定で、1取引あたりの追加コスト約81円が、1取引あたりの平均の純利益約1,344円より小さかったためです。EAの平均損益やロットが変われば、同じ広がりでも残る割合は変わります。
何ポイント広がると利益が0になるかも、同じ式で出せる
追加コストの合計が元の純利益と同じになる地点を求めれば、計算上の純利益が残らなくなる境目を確認できます。
利益が0になる上乗せポイント数=純利益 ÷(取引数 × 1ポイント上乗せしたときの1取引あたりのコスト)
計算上、純利益が0になるのは約875ポイント上乗せしたときです。計算は746,992円 ÷(556 × 1.535円)です。
求めた値は、ふだんのスプレッドと同じポイント単位で比べます。ZEN AI LABでは、同じ計算でスプレッドを何段階かに分けた場合と、スリッページを足した場合も確かめています。それらの結果は、全検証の記事(980円)に掲載しています。
自分のEAで確かめるチェック表
必要な値は、同じバックテストのレポートと銘柄の仕様からそろえます。確認した時点や単位も一緒に残します。
| 確かめること | どこで見るか | 注意 |
|---|---|---|
| 取引数と純利益 | テストのレポート | 同じテスト結果から控える |
| ロット | レポートまたは取引履歴 | 固定か変動かを確認する |
| ポイントの大きさ | 銘柄の仕様 | 桁数と単位を確認する |
| 契約サイズ | 銘柄の仕様 | ブローカーと銘柄で異なる |
| 換算レート | 計算時点の為替レート | 口座の通貨へそろえる |
| ふだんのスプレッド | 実際の口座 | 確認した時点も控える |
| スプレッドフィルターの有無 | EAの仕様や入力項目 | 広いと取引しない仕組みがあるか確認する |
次の表の右端へ、自分の値を書き込めます。
| 入力 | ZENの例 | あなたの値 |
|---|---|---|
| 取引数 | 556 | |
| 純利益 | 746,992円 | |
| ロット | 0.01 | |
| ポイントの大きさ | 0.01 | |
| 契約サイズ | 100 | |
| 換算レート | 153.5円 | |
| ふだんのスプレッド | 53ポイント | |
| 1ポイントあたり1取引のコスト | 1.535円 |
EAによっては、スプレッドが一定より広いと取引しない仕組みがあります。個人の検証記事では、同じEAをMT5とMT4で試したところ、取引数はMT5が636回、MT4が754回でした。記事の説明では、その期間のMT5の履歴スプレッドが大きく、4.0pipsを超えるとエントリーしない制御がMT5側で効いていた、と説明されています。これは個人による二次情報です。
配布されているEAの初期値と公開値を比べてバックテストした例は、The Impossible Gold EAの設定の記事にあります。
この計算で分からないこと
この計算は、元の取引を固定してコストだけを増やします。売買条件そのものが変わる場面は再現しません。
- 基準のスプレッド53ポイントと換算レート153.5円は、2026年9月13日の1時点で確認した値です。
- 時間帯や指標発表によって、スプレッドが広がったり戻ったりする動きは入れていません。
- スプレッドが広いと取引しないEAや、売買のタイミング、約定、損切り位置が変わるEAでは、その変化を再現しません。
- カスタム銘柄を使ったテスター内の検証は、ZEN AI LABでは実施していません。
- 実例は、ロット0.01の固定、M15、約14.3か月で試した1つのEAです。
- 実例の「2倍」は、実ティックの履歴に入っているスプレッドはそのままにして、取引ごとに基準の53ポイントをもう1回分を足すという仮定です。履歴のスプレッドそのものを2倍にしたわけではありません。
計算の実例に使ったEAの検証結果は、XAUUSD 5 minute EAは7.3でも動く?実ティック14.3か月の検証で読めます。
バックテストのあとにEAを24時間動かすなら、先に動かす環境のメモリを見ておきます。ZEN AI LABのPCとVPSを測った記録は、EAを24時間動かすVPSの選び方|MT5データ51GBでもメモリ残り110MBにまとめています(そのページには広告を含みます)。
まとめ
- MT5のストラテジーテスターは、履歴データに記録されたスプレッドを使います。
- 1取引あたりの追加コストを出せば、広がったときに残る純利益を計算できます。
- 利益が0になる上乗せポイント数も、取引数と純利益から求められます。
自分の結果では、次の順番で確かめます。
- 自分のEAのレポートから取引数と純利益を写します。
- スプレッド2倍の上乗せを計算し、純利益が残る割合を見ます。
- 利益が0になる上乗せポイント数を出し、ふだんのスプレッドの何倍かを見ます。
EAごとのコストへの強さはFX VERIFY LABで
FX VERIFY LABがnoteで公開済みの検証レポート2本は、どちらも取引ごとにコストを足す計算で確かめています。ZEN AI LABでは、EAごとの検証を定期購読マガジン「FX VERIFY LAB|EA性能検証レポート」(月980円)で続けています。コストを加えた条件まで確認したい方は、続きをご覧ください。


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