多摩川は「日本一の静水面」と紹介されます。では、水面が静かな分だけ1号艇も強いのでしょうか。
数えると、1号艇の1着率は53.22%で、全国の54.59%より1.37ポイント低い側でした。静水面だからインが強い、とは数字から言えません。差が大きかったのは水面よりレース番号で、5Rは41.52%、10Rは67.82%です。
この記事では、多摩川の1号艇・レース番号・決まり手・風と季節を全国と並べて確かめます。読み終えると、多摩川の出走表でどこを見るかが分かり、よく行く場で同じ検証をする手順も持ち帰れます。
数えたのは、ZEN AI LAB が作って販売している自社ツールで集めたデータです。予想の方法や買い目は書きません。データの見方の全体は競艇のデータの見方と集め方にあります。
1号艇の1着率は53.22%。全国より1.37ポイント低い側
使ったのは2023年1月3日〜2026年9月27日の多摩川8,712レースです。中止23を除いた8,689レースを、全国の207,662レース(全210,600レースから中止を除いた数)と比べました。
枠番ごとの1着率です。「95%の幅」は、偶然のぶれを見込むとこの範囲に収まりそうだ、という目安です。
| 枠 | 多摩川(95%の幅) | 全国 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1号艇 | 53.22%(52.17〜54.26) | 54.59% | −1.37 |
| 2号艇 | 14.87%(14.14〜15.63) | 13.88% | +0.99 |
| 3号艇 | 12.35%(11.67〜13.06) | 12.59% | −0.24 |
| 4号艇 | 10.58%(9.95〜11.24) | 10.08% | +0.50 |
| 5号艇 | 6.08%(5.59〜6.60) | 5.80% | +0.27 |
| 6号艇 | 2.91%(2.58〜3.29) | 3.06% | −0.15 |
差と呼ぶ条件は、数える前に3つ決めました。差の95%の幅が0をまたがない、差が1.0ポイント以上、2023〜24年と2025〜26年で同じ向き、です。
3つとも満たしたのは1号艇だけで、差の幅は−2.44〜−0.30です。ただし向きが同じでも、前半は−1.88ポイント、後半は−0.79ポイントでした。後半だけなら幅が−2.36〜0.78で0をまたぐので、差があるとは言えません。
2号艇の+0.99ポイントは条件に届かないので、特徴とは呼びません。全24場の並びは競艇24場の枠番別・コース別1着率にまとめてあります。
いちばん差が大きかったのはレース番号だった
水面の話を確かめていて、予定より大きな差が別の所に出ました。レース番号です。

| レース | 多摩川 | 全国 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1R | 51.45% | 58.28% | −6.84 |
| 2R | 44.14% | 47.13% | −2.99 |
| 3R | 40.55% | 45.93% | −5.38 |
| 4R | 39.23% | 47.39% | −8.16 |
| 5R | 41.52% | 52.93% | −11.41 |
| 6R | 42.48% | 47.93% | −5.45 |
| 7R | 51.03% | 50.53% | +0.51 |
| 8R | 57.73% | 52.41% | +5.32 |
| 9R | 63.54% | 56.02% | +7.52 |
| 10R | 67.82% | 59.42% | +8.40 |
| 11R | 69.43% | 66.37% | +3.06 |
| 12R | 69.86% | 70.98% | −1.12 |
各レース番号の母数は720〜725レースで、95%の幅は上下におよそ3.6ポイントです。12のうち8つは、全国の値が多摩川の幅の外にありました。全体の−1.37ポイントは、前のレースが低く、後ろのレースが高い形をならした数字です。
差がいちばん大きい5Rは、年ごとに見ても38.27〜44.16%で、全国の52.76〜53.16%を毎年下回っています。10Rは64.97〜69.63%で、全国の58.94〜59.98%を毎年上回りました(2026年は9月まで)。
同じ日の同じ水面で、これだけ動きます。水面だけでは説明しにくい差です。レースごとの選手の組み方が関係している可能性はありますが、まだ確かめられていません。
多摩川の出走表で見ること
レース番号を3つに分けると、全国との差は次のとおりでした。
| レース | レース数 | 全国との差 | 差の幅 |
|---|---|---|---|
| 1〜4R | 2,899 | −5.84 | −7.68〜−4.00 |
| 5〜8R | 2,899 | −2.76 | −4.62〜−0.90 |
| 9〜12R | 2,891 | +4.47 | +2.73〜+6.21 |
3つとも前半と後半で向きが同じです。ただし5〜8Rの後半だけは、幅が−4.88〜0.57で0をまたぎます。
多摩川の1号艇を見るときは、「多摩川だから」でひとまとめにせず、何レース目かを先に見る。この記事の数字から言えるのは、そこまでです。買う・買わないの判断を示す数字ではありません。
波は全国と比べられなかった。風は弱い側
ボートレース多摩川の公式サイトは「日本一の静水面」と紹介し、ここ数十年で大波が出たのは2回程度とも書いています。BOATRACE 公式サイトの場情報では、水質は淡水、干満差はなしです。
多摩川の記録の上では、波高が2cm以下のレースは89.01%、5cm以上は1.00%です。多摩川の記録全体でも風速と同じ値のレースが31.22%あるので、どこまで実測の波かは、まだ確かめられていません。公式の競走成績ファイル(手元にある2026年9月15日の1日分)に載っている13場では、風速・波高が研究用データベースと全レースで同じ値だったので、同じ値は取り込みの誤りではありません(多摩川はその日のファイルに入っていません)。測り方は、公式に説明が見つかりませんでした。
ただ、「24場で何番目に静かか」は出せませんでした。波高の記録を場ごとに調べると、風速とまったく同じ値が入っているレースの割合が、場によって3.87%から100.00%まで違ったからです。
| 場 | 波高と風速が同じ値のレース |
|---|---|
| 丸亀 | 100.00% |
| 宮島 | 89.52% |
| 多摩川 | 31.22% |
| 常滑 | 3.87% |
同じ物差しの数字とは考えにくいので、波で場を並べるのはやめました。公式の競走成績ファイル(手元にある2026年9月15日の1日分)でも同じ値の割合は場ごとに違っていたので、取り込みの誤りではなく、場ごとの記録の付け方の違いです。付け方が違う理由は、公式に説明が見つかっていません。「日本一」かどうかは、この記録では分からない、というのが答えです。
風速は全国と比べてみました(確認の範囲は最後の記録に書きました)。
| 指標 | 多摩川 | 全国 |
|---|---|---|
| 平均の風速 | 2.37m | 2.80m |
| 風5m以上のレース | 9.52% | 15.83% |
24場の中では風が弱い側でした。
決まり手は、後半だけまくりが多い
| 決まり手 | 多摩川 | 全国 | 差 |
|---|---|---|---|
| 逃げ | 51.19% | 52.39% | −1.20 |
| まくり | 17.08% | 15.54% | +1.54 |
| 差し | 13.11% | 12.60% | +0.51 |
| まくり差し | 11.61% | 11.86% | −0.25 |
| 抜き | 6.18% | 6.75% | −0.57 |
| 恵まれ | 0.83% | 0.86% | −0.03 |
条件を満たしたのは、逃げの少なさ(差の幅−2.27〜−0.12)とまくりの多さ(+0.73〜+2.34)です。
ただ、まくりの差が見えるのは2025〜26年の+2.61ポイントで、2023〜24年の+0.61ポイントは幅が0をまたぎます。「まくりが決まる場」と言い切るには足りません。決まり手の意味は競艇の決まり手にあります。
季節と風速では、はっきりした差が見えなかった
| 季節 | レース | 1号艇の1着率(95%の幅) |
|---|---|---|
| 春(3〜5月) | 2,241 | 54.17%(52.10〜56.23) |
| 夏(6〜8月) | 2,436 | 52.91%(50.93〜54.89) |
| 秋(9〜11月) | 1,907 | 53.85%(51.61〜56.08) |
| 冬(12〜2月) | 2,105 | 51.97%(49.84〜54.10) |
4つの幅は重なっているので、季節の差があるとは言えません。冬は2023〜24年の49.79%と2025〜26年の54.67%で大きく動きました。
| 風速 | レース | 多摩川(95%の幅) | 全国 |
|---|---|---|---|
| 0〜1m | 2,880 | 53.58%(51.75〜55.39) | 58.01% |
| 2〜3m | 4,050 | 53.85%(52.31〜55.38) | 55.22% |
| 4〜5m | 1,391 | 52.05%(49.42〜54.67) | 52.00% |
| 6m以上 | 368 | 47.83%(42.77〜52.93) | 47.23% |
多摩川の中では、幅が重なっていて差があるとは言えません。全国との差が開くのは0〜1mで、差の幅は−6.31〜−2.57です。全国の0〜1mには風の弱い場のレースが多く混ざるので、同じ場の中の変化とは意味が違います。多摩川でこの差が開く理由は、まだ確かめられていません。
よく行く場で同じ検証をする手順
多摩川以外でも、やることは同じです。
- 場と期間を決めて、艇ごとに1行の CSV(表計算で開けるデータの形式)を用意する
- Excel で、その場の1号艇の1着率を出す
- 同じ式で全国の数字も出して、差を見る
- 期間を前半と後半に分けて、同じ向きか確かめる
- レース番号や風速の列で分けて、もう一度数える
使う列は次の7列です。
- race_date(日付)
- venue_name(場)
- race_no(レース番号)
- boat_number(枠番)
- finish_position(着順)
- winning_technique(決まり手)
- wind_speed(風速)
2の式は次の形です。列の位置は、艇ごとの CSV を既定の列で書き出したときのものです(C=場の名前、J=枠番、AU=着順、AW=決まり手)。
=COUNTIFS(C:C,"多摩川",J:J,1,AU:AU,1)/COUNTIFS(C:C,"多摩川",J:J,1,AW:AW,"<>")
分母の AW の条件は、決まり手が空のレースを外すためのものです。中止のレースは決まり手が空なので、これで分母から外れます。この式の条件をデータベースで数えると、4,624÷8,689で53.22%になりました。式の組み立て方は競艇のデータ分析をエクセルでする方法にあります。
難しいのは式より、1つの場のデータをそろえるところです。この記事の表に要る項目を手で写すなら、1レースで15マスになります(6艇×コースと着順の2項目+決まり手・風速・波高)。8,712レースなら130,680マスで、これは行数からの計算による推定です。ここを任せたい人向けに、記事の最後で自社ツールを紹介します。
期間が短いと、この差は見えない
1つの場の30日で取れるレース数は、多摩川だと中央値で192レースでした。
192レースで1号艇の1着率を出すと、95%の幅は上下におよそ7.1ポイントあります。今回の−1.37ポイントは、その幅の中に隠れてしまいます。1か月の数字だけで「この場は1号艇が弱い」とは言えません。レース番号で分ければ1つあたり十数レースです。場の特徴を見るなら、年単位の期間が要ります。
自分の場のデータを集めるなら
ZEN AI LAB の自社ツール BoatData Collector Pro は、この記事のデータの取得に使ったツールです。この記事の取得は、販売版の画面ではなく、同じプログラムのコマンド操作で行いました。
- 期間と競艇場を選ぶと、出走表・展示/直前情報・結果・払戻などをまとめて集めます
- 取得済みの分は取り直さず、続きから取得できます
- Excel・CSV に、レースごとに1行、または艇ごとに1行の形で書き出せます
予想・買い目・自動投票の機能は、どちらの版にもありません。公式サイトや BOATRACE とは関係のない非公式のツールで、データの正確性は保証していません。
年単位の期間を集めるならBoatData Collector Pro のページを見てください。無料版は取得できる期間が直近30日までで、LINE 公式アカウントの友だち追加後に受け取ります。列の形を先に試すなら無料版のページです。
同じ関東の場で、序盤と中盤の差が大きいのは桐生競艇の特徴です。
東京の3場の中で、外のコースが残りやすい場は平和島競艇の特徴で確かめています。
競艇のデータを、何か月分も自分で集めて数えるなら

BoatData Collector Pro は、競艇の公開データを期間と競艇場を選んで集め、Excel・CSV に書き出す自社ツールです。予想や買い目は出しません。保存できるのは2016年10月1日以降のレースです。
- BoatData Collector Pro:6,000円(買い切り・note。ココナラでも6,000円)
- 分析版 BOAT DATA PRO:10,000円(ココナラ)。集めたデータを進入コース別・選手別などに集計する画面つき
- 無料版:直近30日まで(LINEで受け取り)
価格は2026年11月7日の表示です。変わることがあるので、買う前に各ページで確かめてください。Windows 11(64bit)用です。
確かめたことと、データでは分からないこと
- 水質・干満差・「日本一の静水面」・大波の記述は、公式の案内で確かめました。公式の言葉がどの指標を指すのかは書かれていません
- 波高と風速が同じ値になるのは、公式の競走成績ファイル(手元にある2026年9月15日の1日分)でも同じでした。場ごとに付け方が違う理由と測り方は公式に説明が見つからず、まだ確かめられていません
- 風向は、水面に対する向きが場ごとに定まらないので数えていません
- レース番号の差の原因、まくりの差の原因は、まだ確かめられていません
- 数字は過去のレースを数えたものです。この先のレースの結果を約束するものではありません
まとめ
多摩川の1号艇は、全体では全国より低い側でした。ただしレース番号によって、低い所と高い所がはっきり分かれます。次にやることは3つです。
- 「静水面だから1号艇」と決めずに、何レース目かを一緒に見る
- 全24場の中の位置を競艇24場の枠番別・コース別1着率で確かめる
- 1号艇全体の話は競艇の1号艇の勝率へ進む
LAB 記録(読み飛ばしてかまいません)
- 研究用データベースを読み取り専用で開いて数えました。計画は数える前に書きました。レース番号×年、列の位置、波高と風速の突き合わせは、結果を見てから足しました
- 計画では波の24場比較と波高帯ごとの1号艇を比べる予定でしたが、上の理由で全国との比較をやめました。多摩川の中の波高帯は、0〜2cmが53.36%(7,734レース)、3〜4cmが51.96%(868レース)、5cm以上が52.87%(87レース)です
- データは2026年9月28日に BoatData Collector Pro のコマンド操作で取得しました。艇ごとの CSV にすると52,272行(8,712×6)・51列です。列名は出力の仕様で確かめました。取得元は非公式の API と公式の配布ファイルです。取得の途中で不具合が見つかり、修正を入れたプログラムで取り直しました
- 風速を比べた理由: 波高と同じ値が多い場でも、平均の風速は他の場と同じ範囲にあります。公式ファイルとの不一致の記録も波高・風速ともに0件でした。原本と直接比べたのは、公式の競走成績ファイル(手元にある2026年9月15日の1日分)だけです。その日の13場は、風速・波高とも全レースで研究用データベースと同じ値でした(多摩川はその日のファイルに入っていません)。平均の風速は24場の小さいほうから4番目で、宮島の2.39mと僅差です
- 全国には多摩川自身も含みます。1号艇の全国54.59%はこの期間の数字で、競艇24場の枠番別・コース別1着率は10年分なので54.1%です
- 比較を何十回も行っています。条件を3つ決めましたが、中には偶然で条件を満たすものが混ざる可能性があります。2コースの1着は14.70%(全国13.64%)で条件を満たしましたが、後半の差は0.33ポイントで、ぎりぎりです。1コースは53.38%(全国55.03%)でした
- 表の95%の幅は Wilson 区間、差の幅は2つの割合の差の正規近似です。30日の幅は1.96×√(p(1−p)/n)で出しました
- 30日のレース数は、全日を起点に30日ずつ数えた中央値です。最小108、最大264でした
- 枠なりで6艇が入ったレースは83.05%(全国80.53%)でした
- 公式の説明は、2026年10月31日に単発の取得で読みました。多摩川公式の水面の説明は、要約を通して読んでいます。干満差は BOATRACE 公式サイトの項目名で、多摩川公式では「水位差」です
- 販売ページは2026年10月29日に保存した内容で書きました

