Yahoo!知恵袋に、2024年11月にこんな質問がありました。「3連単で賭けた1艇が転覆しても、払い戻しにならないのですか??」。券売機に入れたら、払戻の対象ではないと表示されたそうです(質問ページ)。
答えは「返ってきません」。スタートしたあとの転覆は失格で、その艇の舟券は返還になりません。返還になるのは、フライングや出遅れなどで走らなかった(欠場した)艇の舟券です。
この記事では、返還の扱いを、モーターボート競走法の条文と BOATRACE 公式サイトの用語辞典で確かめます。走る艇が足りずに券種そのものが成り立たない「不成立」(その券種は返還)と、払戻の対象の舟券を買った人がいないときの「特払い」も扱います。そのうえで、1艇が欠場したときに券種ごとに何通りが返還になるか、何艇も欠場・失格したレースで実際にどの券種が不成立になったかを、約21万レースの記録で数えました。
数えたのは、ZEN AI LAB が作って販売している自社ツールで集めた研究用データベースです。欠場と失格の違いや、失格・欠場がどれくらいの頻度で起きるかは競艇のルールにまとめています。この記事は「そのとき舟券がどうなるか」に絞ります。
分かれ目は「その艇が走ったか」
公式の用語辞典では、欠場は「スタート時までに起こった」原因で、艇がレースへの出場を取り消されることです。欠場した艇に関する舟券は、すべて払い戻しになります。失格はスタート以降の判定で、欠場と違って舟券は返還されません。
法律も同じ形です。モーターボート競走法の第18条は、単勝・複勝では「発売した舟券に表示されたモーターボートが出走しなかつたとき」、その投票を無効にしています。無効になった舟券は、買った金額の返還を求められます(同条第6項)。

転覆は、いつ起きたかで扱いが変わります。待機中の転覆は欠場で返還、スタート後の転覆は失格で返還なしです。「競艇はフライングは返還なのに自爆での転覆はなぜ返還じゃないのですか?」という質問もありました(質問ページ)。フライングの艇は欠場として走らなかった扱いになり、転覆した艇は走った扱いになる、という違いです。欠場と失格の区別のくわしい説明は競艇のルールにあります。
では、2号艇が欠場したとき、持っている舟券はどうなるでしょうか。券種ごとに並べました。
| 持っている舟券 | 2号艇が欠場すると |
|---|---|
| 単勝 2 | 返還 |
| 拡連複 2=5 | 返還 |
| 2連単 1-2 | 返還 |
| 2連単 1-3 | そのまま(1着1号艇・2着3号艇なら払戻) |
| 3連複 1=3=4 | そのまま(1・3・4号艇が3着までなら払戻) |
2号艇を含む組だけが返還で、含まない組はふつうに結果を待ちます。同じ2号艇が1周目で転覆して失格になった場合は、どの舟券も返還になりません。
フライングの休みや頻度は競艇のフライングとはにあります。
1艇が欠場すると、3連単は120通りのうち60通りが返還
欠場した艇を含む組は、どの券種でもすべて返還になります。6艇のうち1艇が欠場したとき、券種ごとに返還になる組の数を図にしました。

3連単は120通りのうち60通り、3連複は20通りのうち10通りで、半分が返還です。欠場した艇が1着・2着・3着のどこかに入る組が全部返還になるからです。2連単は30通りのうち10通り、2連複と拡連複は15通りのうち5通り、単勝と複勝は6通りのうち1通りです。
実際には、欠場が2艇以上になるレースもありました。中止を除く207,662レースのうち、欠場の艇があったレースで、欠場が何艇だったかを数えました。
| 欠場した艇 | レース | 割合 |
|---|---|---|
| 1艇 | 5,270 | 84.67% |
| 2艇 | 694 | 11.15% |
| 3艇 | 206 | 3.31% |
| 4艇 | 54 | 0.87% |
欠場のあったレースの15.33%は、2艇以上が欠場していました。そのうち93.50%は、欠場した艇がすべてフライングでした。
4艇が失格したレースでは、3連単と3連複が不成立
「4船以上転覆した場合、3連単や3連複はどうなりますか?」という質問もありました(質問ページ)。
転覆があったレースは中止を除いて5,603レースで、そのうち転覆が2艇以上だったのは168レース(3.00%)でした。転覆が4艇のレースは1レース、3艇は7レースです。
転覆・落水・エンストなどを合わせた失格が4艇だったレースは、16レースありました。ゴールした艇は2艇だけです。16レースとも、払戻の記録は次の形でした。
- 3連単・3連複: 不成立
- 単勝・複勝・2連単・2連複・拡連複: 払戻あり
3連単と3連複は3着までの艇が要るので、2艇しかゴールしないと成り立ちません。2艇しかゴールしなければ、3連単と3連複には勝舟がありません。法律では、勝舟がなかったときの投票は無効で、買った金額の返還を求められます(第18条第1項第3号・第6項)。4艇以上が走ったレースでは、失格で艇が減っても、ゴールした艇が3艇以上いれば3連単と3連複には払戻がありました。
何艇が走ったかで、不成立になる券種が変わる
不成立は、券種ごとに決まります。研究用データベースで「不成立」と記録された払戻を、走った艇(欠場を除く)とゴールした艇の数で分けると、次のようになりました。
| 走った艇・ゴールした艇 | レース | 不成立の券種 | 払戻があった券種 |
|---|---|---|---|
| 2艇・2艇 | 54 | 複勝・2連複・拡連複・3連単・3連複 | 単勝・2連単 |
| 3艇・3艇 | 204 | 拡連複・3連複 | 単勝・複勝・2連単・2連複・3連単 |
| 4艇以上・2艇 | 23 | 3連単・3連複 | 単勝・複勝・2連単・2連複・拡連複 |
3艇しか走らなかったレースでは、3連単には払戻がありましたが、3連複と拡連複は不成立でした。3艇だけで走ると、3連複の組は1つしかなく、拡連複は3組すべてが払戻の対象になるため、成り立たないと考えられます(記録から読んだもので、規程の文では確かめていません)。2艇しか走らなかったレースでは、単勝と2連単だけが残りました。

単勝と2連単には、不成立の記録がありませんでした。3連単の79レースは、競艇のルールで数えた「2艇しか着順が付かなかったレース」と同じものです。
何艇で不成立にするかを決めた規程の文は、この記事では確かめられていません。ここに書いたのは、ZEN のデータに残った記録の形です。
払戻の対象を買った人がいないと「特払い」
法律の第15条第3項には、「勝舟投票の的中者がない場合」の決まりがあります。その場合は、売上金の一定の割合を「勝舟以外の出走したモーターボートに投票した者」に、舟券ごとに按分して払い戻します。これがいわゆる特払いです。
研究用データベースでは、特払いは135レースにありました。券種ごとでは単勝が122レースと大半で、2連複10、複勝3、2連単2でした。3連単・3連複・拡連複は0です。記録された払戻金は、どれも100円あたり70円でした。
単勝の特払い122レースで1着だった艇は、6号艇47・5号艇36・4号艇20・3号艇14・2号艇5で、1号艇は0でした。外側の艇が1着になったレースに多く出ています。
払戻・返還は60日で時効
払戻金も返還金も、受け取れるようになってから60日のうちに受け取らないと、時効で消えます(第20条)。公式の用語辞典も、フライングや出遅れがあった舟券は捨てずに、レース確定の発表を待って払戻し窓口へ行くように書いています。
自分の場や期間で、不成立・特払いを数えるには
BoatData Collector Pro で払戻を CSV に書き出すと、払戻の状態が payout_status の列に入ります。ZEN が書き出した CSV では E列が bet_type(券種)、I列が payout_status でした。通常の払戻は NORMAL、不成立は NOT_ESTABLISHED、特払いは SPECIAL_PAYOUT です。列の位置は書き出し方で変わることがあるので、1行目の列名で確かめてから式を入れてください。
- BoatData で、見たい場と期間の払戻を CSV に書き出します
- Google スプレッドシートかエクセルで開きます
- 空いているセルに、次の式を入れます
- 3連複の不成立の数:
=COUNTIFS(E:E,"trio",I:I,"NOT_ESTABLISHED") - 単勝の特払いの数:
=COUNTIFS(E:E,"win",I:I,"SPECIAL_PAYOUT") - 3連単の通常の払戻の数:
=COUNTIFS(E:E,"trifecta",I:I,"NORMAL")
2026年8月24日の1日分の CSV を Python で数えると、3連単の通常の払戻は144行で、不成立と特払いは0行でした。不成立や特払いは3年9か月で数十〜数百レースなので、1日分ではまず出てきません。その1日分でも、払戻の行は全券種で1,440行ありました。集めるところは、ツールに任せる方法もあります。
払戻を集めて表にするところを任せるなら
ZEN AI LAB の自社ツール BoatData Collector Pro は、この記事の数字を数えた研究用データベースを作ったツールです。競艇の公開データを、期間と競艇場を選んでまとめて集める Windows 用のツールです。
- 出走表・展示/直前情報・結果・払戻を取得して、SQLite にためます。取得済みのデータは取り直さず、次からは続きから取得します
- Excel・CSV に書き出せます
使う前の注意
- 予想・買い目・自動投票の機能はありません。集めて保存し、出力するところまでです
- 公式サイトや BOATRACE とは関係のない、非公式のツールです。データの正確性は保証していません
- 無料版があります。取得できる期間は直近30日までで、LINE 公式アカウントの友だち追加のあとに受け取ります。製品版は期間を自分で選べます(保存できるのは2016年10月1日以降のレース。2026年11月に実際に取得して確かめた範囲)
くわしくはBoatData Collector Pro 無料版のページと、BoatData Collector Pro のページにあります。
艇の欠場ではなく、レースが中止になった場合の扱いは競艇の中止・順延で舟券は返還?で説明しています。
競艇のデータを、何か月分も自分で集めて数えるなら

BoatData Collector Pro は、競艇の公開データを期間と競艇場を選んで集め、Excel・CSV に書き出す自社ツールです。予想や買い目は出しません。保存できるのは2016年10月1日以降のレースです。
- BoatData Collector Pro:6,000円(買い切り・note。ココナラでも6,000円)
- 分析版 BOAT DATA PRO:10,000円(ココナラ)。集めたデータを進入コース別・選手別などに集計する画面つき
- 無料版:直近30日まで(LINEで受け取り)
価格は2026年11月7日の表示です。変わることがあるので、買う前に各ページで確かめてください。Windows 11(64bit)用です。
確かめたことと、データでは分からないこと
返還・不成立・特払い・時効は、2026年11月6日にモーターボート競走法の条文(e-Gov 法令検索)を開いて読みました。欠場・失格・返還の言葉は、BOATRACE 公式サイトの用語辞典を2026年10月31日に読んだ記録によります。数字はすべて、研究用データベース(2023年1月1日〜2026年9月27日)を読み取り専用で開き、計算の前に書いた計画どおりに数えました。
このデータでは分からないことは、次のとおりです。
- 特払いが単勝に集中する理由(まだ確かめられていません)
- 特払いの率。法律は「百分の七十五以上」の範囲で施行者が決める率と書いています。同じ法律で、舟券は10円の券面で売られ、払戻金の1円未満は切り捨てると決まっているので(第10条・第17条)、率が75%以上80%未満なら、10円の舟券1枚あたり7円、100円あたり70円になります。記録の特払いもすべて100円あたり70円でした。施行者が実際に決めている率の値は、施行者の規程を見ていないので、まだ確かめられていません
- ゴールしたあとの転覆の扱い(まだ確かめられていません)
- 購入サービスごとの、返還金の受け取り方(この記事の範囲の外です)
数字はどれも過去のレースを数えたものです。この先のレースの結果を約束するものではありません。
まとめ
舟券が返るかどうかは、その艇が走ったかどうかで決まります。転覆しても走った艇なら返還はありません。
- 「欠場」と出たら、その艇を含む組は返還。舟券は捨てずに確定を待ち、60日のうちに受け取る
- 何艇も欠場・失格したら、券種ごとに不成立かどうかを確かめる。2艇しかゴールしないと3連単・3連複は不成立だった
- 欠場と失格の頻度は競艇のルールで見る
LAB 記録(読み飛ばしてかまいません)
- 期間は2023年1月1日〜2026年9月27日の210,600レースです。中止の2,938レースを除いた207,662レースで、欠場・転覆・失格の艇の数を数えました
- 欠場は、結果の記録で欠場・フライング・出遅れの印が付いた艇です。欠場のあったレースは6,224レースでした。競艇のルールの6,226レースは、着順の状態の名前で数えた値なので少しずれます
- 失格は、着順の状態の名前に「失格」を含む艇です。失格の艇の数ごとのレースは、1艇6,915・2艇1,358・3艇190・4艇16でした
- 不成立の表の「4艇以上・2艇」23レースの内訳は、走った艇4艇が3・5艇が4・6艇が16です。ほかに、走った艇3艇でゴールした艇2艇のレースが2あり、拡連複・3連単・3連複が不成立でした
- 1艇の欠場で返還になる組の数は、組み合わせの数え方で出した値です(3連単は 120 −(残り5艇の 5×4×3=60)=60)
- 特払いの払戻金は、データベースの払戻の記録の値です
- 条文との対応: 2艇ゴールの3連単・3連複は第18条第1項第3号(勝舟がない)に当たります。3艇しか走らなかったレースの3連複・拡連複は勝舟があるので、返還の根拠の条文は確かめていません
- 2艇以上欠場した954レースのうち、欠場がすべてフライングだったのは892レースでした。欠場の艇は、フライング2,131・出遅れ11・そのほか80です
- 法律の条文は、e-Gov 法令検索の法令データを WebFetch の単発で読み、引用の文だけを使いました
- 冒頭の質問は、2026年11月6日に質問ページを開いて本文を確かめました
- 1日分の CSV は、研究用データベースから2026年8月24日の144レースを小さなデータベースに写して BoatData のコマンドで書き出したものです(出目ランキングの作業で作成)
- 販売ページの記述は2026年10月29日の保存分によります

